図面というと、専門的で難しいもの…というイメージを持たれるかもしれません。
けれど、私にとって図面とは「言葉と同じ会話のツール」です。
この言葉に気づいたのは、図面作成や確認申請のサポートを仕事にしはじめた頃のこと。
設計者・工務店・申請機関のやり取りをしていく中で、「図面がうまく機能している現場」と「そうでない現場」の差が、非常に大きいことに気づきました。
図面は“表現”ではなく、“翻訳”でもなく、“対話”の手段。
それぞれの立場にいる人が、自分の言葉で理解し、次の行動に移れるようにする――それが良い図面だと、私は思います。
たとえば:
- 法規上の数値だけを満たしていても、配置や収まりが現実的でなければ現場は困惑します。
- 意図をきちんと図示していても、審査機関の“視点”に合っていなければ申請は通りません。
- 逆に、丁寧に整えた図面一式は、それだけで職人さんたちと共通の理解を生み、現場がスムーズに進みます。
- 図面のデザインばかり気にして、中身が全然ない図面は、絵とかわらない。
私が関わる図面と確認申請の仕事(モノコトデザイン)では、こうした“会話の橋渡し”を常に意識しています。
作成する図面は、確認申請だけのためではありません。
その後の施工・監理・施主対応まで、すべての工程で関係者の判断材料となるからです。
だからこそ、図面作成にあたっては、次の3点を大切にしています:
- “誰が読むか”を明確にする
確認審査?施工者?施主?見る相手で図面の伝え方は変わります。 - “意図を伝える余白”を持たせる
図面は情報の羅列ではなく、読み取ってもらうための工夫が必要です。 - “確認しやすさ”を意識する
チェックのしやすさ=ミスの防止。確認しやすい図面は信用につながります。
図面という「静かな媒体」に、信頼や意思、気配りが宿るとき――
それはただの資料ではなく、設計者としての姿勢そのものが伝わるようになります。
図面は「描く」のではなく「伝える」もの。
私は今日もその気持ちで、1枚1枚の図面に向き合っています。