1. 家づくりを考え始めたあなたへ

家づくりを始めようと思った瞬間、ワクワクと同時に、不安も少しありませんか?

「どんな家にしよう?」
「何から決めたらいいの?」
「予算と理想のバランス、大丈夫かな…」

多くの方がまず向かうのは、住宅展示場やモデルハウス。
白く輝くキッチン、開放感のある吹き抜け、整然と並んだ家具。
「この収納の仕組み、いいかも!」「この間取りも素敵!」と、心はどんどん高鳴ります。

でも、そのとき頭の片隅でこうつぶやく声があるはずです。

「…これって、私たちの暮らしに合ってるのかな?」


2. 10年後に気づく「見落とし」

私がこれまで関わったお施主さまの中には、2度目住まいづくり(建て替え)を検討される方で、こんなことをおっしゃった方がいます。

「1度目はとにかく設備や見た目に夢中で、暮らし方まではあまり考えられなかったんです。
実際に暮らしてみると、動線や光の入り方、家具の置き場所…小さな違和感が積み重なっていって。」

新築直後は気づきにくいのですが、毎日の暮らしの中で「ちょっと不便」「なんとなく落ち着かない」が積み重なり、やがて大きな後悔になります。

その原因はひとつ。
家づくりが「家を建てること」から始まってしまったからです。

本当は、**“暮らしの軸”**を決めることから始めなければいけません。


3. 暮らしの軸とは何か?

暮らしの軸とは、単なる好みやデザインの話ではありません。
それは、あなたの暮らしを支える「判断基準」です。

例えば、

  • 朝起きてどんな光を感じたいか
  • 家族で過ごす時間を、どんな空気で包みたいか
  • 家は静かに休む場所か、活発に集まる場所か
  • 休日は家で過ごす派か、外に出かける派か

こういった価値観や優先順位こそが「暮らしの軸」です。
これが決まっていれば、素材や間取り、家具選びまで迷わず進められます。
逆に軸がないまま進むと、営業トークや流行に振り回され、「なんとなく合わない家」ができあがってしまいます。


4. モノコトデザインの家づくりの始め方

私たちは設計を始める前に、まず暮らしのヒアリングをします。
カタログやプランを見せる前に、あなたの一日を想像しながら話を深掘りします。

例えばこんな質問を投げかけます。

  • 朝起きて最初にすることは?
  • 家で一番落ち着く時間帯は?
  • 家族との会話は、どこで生まれやすい?
  • お客様が来た時はどんなふうにもてなしたい?

このやり取りの中から、「モノコトヒアリングシート(暮らしの軸)」を作ります。
これはその後の間取り、素材、家具配置、色決めなどすべての土台になります。


5. 年間3棟に絞る理由

私たちは設計を年間3棟に限定しています。
理由はシンプルです。
あなたの暮らしに深く向き合い、現場監理も最後まで目を離さないため。

  • 設計打ち合わせは回数無制限
  • 家具やカーテンの選定まで伴走
  • 工事中は現場に足を運び、職人と直接やり取り

「質の高い家づくり」には時間がかかります。
流れ作業で数をこなすのではなく、ひとつひとつを作品のように仕上げるための棟数制限です。


6. 暮らしの軸が導く“自分らしい家”

あるご家族の軸は、「朝の光をダイニングで感じたい」でした。
その軸があったおかげで、窓の位置も屋根の形も自然に決まり、引き渡しから何年経っても「この朝ごはんの時間が幸せ」と感じていただけています。

別のご夫婦の軸は「家の中で音楽を楽しむこと」。
照明やピアノの位置の工夫。お友達を招いて発表会を楽しむ家ができあがりました。


7. まずは“話す”ことから始めませんか?

家づくりは、図面や資金計画から始めるのではなく、暮らしを語ることから始めるべきです。
そしてその対話を通じて見えてくる「軸」こそが、後悔しない家づくりのたったひとつの鍵。


次の記事では、その軸をどう図面に落とし込むかについてお話しします。
図面はただの設計図ではなく、あなたの夢を現実に変える会話ツールです。


👉 続きはこちら:図面は“会話のツール”である — 暮らしを形にする方法

プロフィール — 日吉 一幸(ひよし かずゆき)

モノコトデザイン株式会社 代表取締役/一級建築士(大臣登録 第339071号)
インテリアコーディネーター、風水建築士、整理収納アドバイザー

20年以上にわたり、約3,000組の住宅設計に携わる一級建築士。
住宅設計だけでなく、大規模修繕設計や風水を取り入れた設計監理も手がけ、幅広い知見を持つ。

著書に『3000人の家を建てて気づいた本当に「良い家」の建て方』があり、
「暮らしに寄り添い、心地よさを追求する設計」を信条としている。

設計においては、年間3棟に限定して、ひとつひとつの家に深く向き合うスタイルを貫く。
家具の選定やコーディネートまで伴走し、完成後も長く快適に暮らせる住まいを提供することを使命としている。

「家は単なる建物ではなく、人生の舞台」と考え、
お客様一人ひとりのライフスタイルや価値観に寄り添った、唯一無二の住まいづくりを心がけている。